レゴ暦1391年8月19日

リューゲン連邦首都

レゴリス首長国連邦大統領「―――この停戦条約により、世界平和が実現する事を切に願う。レゴ暦1391年8月19日、レゴリス首長国連邦大統領、アーノルド・グリーブランド」

リューゲン停戦条約により、同年7月19日から始まっていた戦争は終わりを告げた。何百万の犠牲を残して・・・・・
事の始まりはレゴ暦1388年9月22日の大規模なテロだった。まさかあの事件が元で戦争が起こるとは誰も予想し得なかっただろう・・・・

レゴリス戦記 黙示録1391 第1話 「奇襲」

レゴ暦1391年7月19日 早朝

レゴリス首長国連邦首都 レゴリスシティー

レゴリス首長国連邦軍 統合作戦本部

レゴリス首長国連邦は未だに暗闇に包まれていた。総人口4億2450万人もその殆どがベットに横たわっている。統合作戦本部の一部職員を除いて。
そのベットに横たわっている1人の男性が居る。彼の名はヘンリー・オールドソン、階級は元帥、時の統合作戦本部長(軍の事実上の最高司令官)だ。
その彼は突然の警報に驚いた、何故ならばその警報の種類が「他国による領海侵犯、並びにその他国の奇襲攻撃」だからだ。
統合作戦本部長「敵の奇襲だと!?レーダーはどうしていた!」
統合作戦本部長の怒号に驚いた統合作戦本部付きのレーダー員は「レーダーには何も映っておりませんでした!」と言った。
それに対し統合作戦本部長は「敵がステルス迷彩でも完成させたのか!?畜生!」と怒っている。
「まぁ、そんな事はともかく、敵の位置、並びに所属国が判明しましたよ」
冷静な副官がこれを沈静化させるため首を突っ込んだ。レーダー員はほっとしていた。
「それで、所属国は?」
統合作戦本部長は聞いた
そして所属国を聞いた統合作戦本部長は「やはりか・・・」と心の中で呟いた。

レゴリス首長国連邦首都 レゴリスシティー

レゴリス首長国連邦大統領官邸

「な・・・なんだと!?」
現レゴリス首長国連邦大統領であるアーノルド・グリーブランドは驚いた表情でそう言った。
「そ、それは本当の事なのかね?」
「ええ、ブルーコスモス帝国海軍の10個艦隊が我が国の領海に進入、その近くにいた漁船を撃沈した後、ハイネセル首長国にある主要軍港を奇襲攻撃、その軍港に停泊していた第9、第10艦隊が全滅しました」
「(まさか私の在任中に戦争が起こるとはな・・・あの経済制裁の返答がこれか・・・・)」大統領はそう心の中に呟いた
大統領の頭の中では約3年前と今年の3月中旬の記憶が蘇る。
レゴ暦1388年、レゴリス首長国連邦ではバブル経済が崩壊し、後に「レゴリス大不況」と呼ばれる不況の真っ只中であった。
そんな中、大規模なテロが起こった。俗に言う、「フェニックス テロ」だ。フェニックス テロとは、
当時世界最大の超高層ビルであったフェニックスタワー(全長637メートル・134階)が、レゴ暦1388年9月22日、所属不明の武装集団に占拠され、内部にいた会社員を初めとする約2000人が人質となり、身代金を所属不明の武装集団は要求した。
これに対し政府は人質の中に現リューゲン連邦副大統領のご息女も居た事も考慮しABORNE部隊(後のABORNE特殊作戦軍)を人質救出及び武装集団殲滅のため出動した。
ただし、結局は失敗した。何故ならば、「所属不明の武装集団が自爆」したからだ。
この出動により我々は殲滅されるという事を悟った所属不明の武装集団はフェニックスタワー各所にC4を設置し、何時でもビルを爆破し崩す事ができるようにした。
彼らの悟ったとうりABORNE部隊は善戦を続け、既に64階まで占拠しじわりじわりと武装集団に近づいていた。
そして彼らは自爆を決行した。総死者数5491人、過去最悪のテロとなった。
この後地道な捜査が続き、テロ発生から約3年後、ついに捜査結果が発表された。
大統領「今回のテロの犯人である所属不明の武装集団が約3年ほどの捜査によりやっと判明致しました、それは――――――です」
その言葉に報道陣は絶句した。そう、大統領はこう言ったのだ。
「それはブルーコスモス帝国政府直属特殊部隊、ARSです。」
その言葉の後、大統領はさらにこう言った。
大統領「そして、今回のテロを踏まえ、我が国は同国へ抗議すると共に同国へ経済制裁を実施致します。」
そう言って以来、ブルーコスモス帝国との交易はなくなり、関係が冷え込んでいた。まさに一触即発の状態だったのだ!
それを予見できなかった大統領を初めとする軍上層部への批判は免れないであろう。だが、今はそんな事はどうでもいい。問題はこれからだ・・・・
「むむむ・・・国家警戒レベルを1に上げろ!陸・海・空・宇宙各軍に臨戦体制を取らせろ!海軍艦艇は大至急出撃せよ!」
「了解致しました。今すぐ統合作戦本部長に報告致します」
秘書の無機質な声を聞いた後、ドアが閉まる音が聞こえた。
「ふぅ・・・」大統領は一仕事を終えたようにため息をついた。
「(これで本当によかったのだろうか・・・・)」大統領にはそんな思いが過ぎっていた。

レゴリス首長国連邦首都 レゴリスシティー

レゴリス首長国連邦統合作戦本部

統合作戦本部長「という命令が大統領から来てたのさ」
海軍軍令部総長「こんな時によく楽観視できますね。オールドソン統合作戦本部長」
統合作戦本部の中央オペレーター室の前面には巨大なメインスクリーンがある。その横には大小のスクリーンやレーダー画面などがあるが、その巨大なメインスクリーンには4名の現役の元帥が写っていた。
陸軍大本営総長ファリハッド・イスラフィル元帥
海軍軍令部総長アンスヘルム・アイゼンブルク元帥
空軍参謀総長アリムンバ・マハートマー元帥
宇宙軍宇宙艦隊司令長官トウエイ・ツァオ元帥
そして統合作戦本部長ヘンリー・オールドソン元帥
後にこの中から数人が姿を消すが、今の彼らにはまだ分かっていない。
陸軍大本営総長「それで、臨戦態勢はとりますが、その後はどうするので?」
そして数秒の沈黙の後
統合作戦本部長「陸軍はハイネセル首長国方面軍と至急連絡をし、ハイネセル首長国方面軍の全戦力をハンプシャー諸島に展開せよ。どうやらブルーコスモス帝国はハンプシャー諸島を橋頭堡として本土攻略を志してるらしいからな」
陸軍大本営総長は軽く頷いた。
統合作戦本部長「空軍はハイネセル首長国に展開している各飛行隊に敵艦隊を攻撃せよ」
「そうさせていただきます」空軍参謀総長はそう言った。
統合作戦本部長「海軍は東部方面艦隊群を出撃させ、空軍と連携しつつ敵艦隊を攻撃せよ」
海軍軍令部総長「了解いたしました、既に東部方面艦隊群に出撃命令を出しており、正規空母を主戦力とした第3、第6、第7、第11艦隊、軽空母を主体とした第13、第16、第17、第20、第25艦隊が出撃しております」
統合作戦本部長「宇宙軍に関しては現状維持をお願いしたい」
宇宙軍宇宙艦隊司令長官「わかっておりますとも」初老の元帥はそう答えた
統合作戦本部長「それでは、解散」
各元帥「ハッ!」
そして巨大なメインスクリーンは元のレゴリスの領土の画面に戻った。
統合作戦本部長「さて・・・これで当分は持つかな・・・?」
統合作戦本部長はそう呟いた、しかしその呟きを聞いたものは居ない。

ハンプシャー諸島南東25km地点

ブルーコスモス帝国レゴリス遠征軍艦隊

ブルーコスモス帝国海軍上級大将の艦隊司令は不適な微笑を見せていた。
艦隊司令「ふっふっふ。この作戦が成功すれば私は間違いなく元帥へと昇進できる・・・・すべては総統の名の元に!」
そう言っていたとき、レーダー員の声が聞こえた。
「敵艦隊捕捉!距離にして約20km!」
「ふむ・・・」
艦隊司令は首を傾げていた、「(通常ならば艦隊は集結させ、戦力の統合を図る筈なのに・・・・敵が10個艦隊ほどに分散されているだと・・・これではまるで各個撃破してくださいと言っているようなものではないか!)」
2分ほどの沈黙の後、艦隊司令は命令を下した、「各個撃破せよ」と。
そして約10分後、レゴリス首長国連邦海軍東部方面艦隊群所属の第7艦隊のフリゲートにミサイルが直撃し、そのフリゲートは轟沈した。
・・・・こうして、数百万の血を流す短い戦いの火蓋が切られた。

つづく